
はじめに
» なぜこの時期にセラピーを受けたのか
思い立った理由は、正直、自分の吃音治療ではなく、“吃音のセラピー、治療とはどんなものか”に興味があったからだ。
今秋から米国の大学院で言語病理学の勉強を始めるにあたり、事前にスピーチセラピストの現場を見て、どのようにクライアントと接し、セラピーが行われるのかを見学してみたかった。それがその後の大学での臨床実習にいかに役立つかという視点でも価値ある経験だと思った。と同時に、やはり自分のこと、吃音のことをもっと知りたいとも思っていた。
時間のある今だからこそできる自分自身の吃音の分析と、それによって絡みついた様々な感情や自分の性格形成の分析にじっくり向き合ってみたかった。2週間半、大学の寮に住んで毎日毎時間自分のことを考える。きっとこの先こんなチャンスはないだろうと思い、思い切って受けてみることにした。
» きっかけ
直接的なきっかけは、友人の友人を通して奇遇に知り合ったアメリカ人スピーチセラピストの友人との交友だった。彼は2年前にこのプログラムにクライアントとして参加し、「吃音は治っていないけれど、吃音のこと、そして自分のことをたくさん学んだ」と参加を勧めてくれたのだ。
彼はその翌年、スーパーバイザーとして学生のクリニシャンのサポートをし、今年も続けてスーパーバイスし、秋からこの大学の博士課程に入る。 彼は6年間、スピーチセラピストとして小学校で吃る子どもとその家族と接してきたけれど、実際はセラピー自体より、セラピーの報告書や学校関係の書類などの作成で忙しいことに不満を感じていた中で、自分の情熱はやはり吃音に向いており、その研究に生涯を捧げたい、ということに気づき、博士への進学を決意したと話してくれた
彼のおかげで、このプログラムの治療費、宿舎代を含めた金額の約2/3をカバーする奨学金をいただくことができた。