
自分ひとりで悩んでいたのでは堂々巡りになり、吃音と共に生きるという覚悟は持てませんでした。同じような体験をしてきた人たちの中だから、これまで誰にも話せなかった、吃音の苦悩を話すことができました。自分の体験を話し、共感して真剣に聞いてもらえた体験があったから、私は新たに人生の一歩を踏み出すことができました。
東京正生学院でたくさんのどもる人と出会い、悩んでいたのは私ひとりではなかったとまずほっとしました。人に話をし、聞いてくれる仲間のありがたさを体験した私は、東京正生学院を退所して、またひとりぼっちになりたくないと、そこで出会った人たちと、どもる人のセルフヘルプグループ言友会を、1965年秋に創立しました。そのグループの体験の中で、私はたくさんのことを経験し、たくさんのことを学びました。全国言友会連絡協議会の会長を長く続けましたが、事情があって、言友会から離脱し、大阪と神戸のグループが中心になって、日本吃音臨床研究会を設立しました。
現在、セルフヘルプグループとしては、NPO法人大阪スタタリングプロジェクトで活動を続けています。さらに、セルフヘルプグループを支援する大阪セルフヘルプ支援センターの発会式から参加し、幅広くセルフヘルプグループについて学び、考え、実践してきました。このコーナーでは、私の体験を踏まえつつ、広くセルフヘルプグループ全般について考えることにします。
セルフヘルプグループでは、気持ちのわかちあい、そして、知識、情報、体験のわかちあい、さらに治すのではなく、吃音と共に生きていこうという吃音者宣言に見られる価値感のわかちあいができました。日本でも、世界でもさまざまなセルフヘルプグループが活動を続けています。それらの活動を紹介しながらセルフヘルプグループについて考えます。
(伊藤伸二)
▶ セルフヘルプグループ 朝日厚生文化事業団のガイドブックより
