
「私たちがこれまでとりつかれてきた、恐怖・差恥・無知の悪魔の中で、無知という悪魔は最も手ごわく、無知のために吃音は、わけのわからないのろいのように思われてきました。無知の悪魔と戦うために、どもる当事者やまわりの人々に、吃音の本当の問題は何かを知らせましょう。どもりながらも実りある人生を送ってきた多くの先輩たちに学び、どもる恐怖から逃げずに、どんどん話していかなければなりません。そうすることが、吃音を知らない人々が作りあげた吃音に対する悪いイメージを変えていくことになります。
どもること自体、少しも恥ずかしくも恐ろしくもありません。どもらないふりをすることや、どもることを恐れ、恥ずかしがり、どもっていたら自分のしたいことが何もできないと思いつめることに問題があります。吃音にとらわれて犯してきた私たちの失敗を、どもる子どもたちが繰り返さないように、成人の仲間が自分を無価値な人間だと卑下しないように、私たちは私たち自身を変えて、社会を啓発していかねばなりません。
吃音にとらわれ、自分の人生を台なしにするのではなく、輝きあるすばらしい人生を共に送っていきましょう」
ウエスタンミシガン大学教授(言語病理学)チャールズ・ヴァン・ライパー
私が書いた「どもりの相談」の巻頭言にライパー博士が寄せて下さったメッセージです。確かに私が吃音に悩んでいたとき、吃音とは何かや吃音治療の歴史やこれまで吃音に悩む人がどう生きてきたかを知りませんでした。無知だったために悩んだと言えます。
1986年夏、私が大会会長として第一回吃音問題研究国際大会を開催して以来、3年ごとの世界大会や、吃音研究者の国際学会などで、世界の吃音の情報交換が始まりました。 知っておきたい吃音基礎知識や吃音治療の歴史や世界の吃音の現状を紹介します。
(伊藤伸二)
