僕は確かに、うまくしゃべれない少年だった。いまでも言葉をしょっちゅう詰まらせながら、おとなの日々を過ごしている。
参考になる話はそれなりにできるかもしれない。教訓めいた話だって、一つや二つはあるだろう。
でも、ぼくはぼくで、君は君だ。君を励ましたり支えたりするものは、君自身の中にしかない。
うつむいて、ぼそぼそとした声で話せばいい。ひとの顔をまっすぐに見て話すなんて死ぬほど難しいことだと、ぼくは知っているから。ゆっくりと話してくれればいい。
君の話す最初の言葉がどんなにつっかえても、ぼくはそれを、ぼくの心の扉を叩くノックの音だと思って、君のお話が始まるのをじっと待つことにするから。
君が話したい相手の心の扉は、ときどき閉まっているかもしれない。でも、鍵はかかっていない。鍵を掛けられた心なんて、どこにもない。
ゆっくり読んでくれればいい。難しいことは書いていない。ぼくは数編の小さなお話のなかで、たったひとつのことしか書かなかった。
「それがほんとうに伝えたいことだったら…伝わるよ、きっと」
|