どもる子どもの親の相談会2004・報告

報告・溝口稚佳子

 
 大阪スタタリングプロジェクトは、NPO法人として、社会に向けたさまざまな活動をしています。吃る人のための吃音教室がその最大のものですが、後輩である吃る子どもたちのことも大切にしたいと思っています。私たちが悩み、苦しんできたことは、それはそれなりに今になれば悪くはなかったかもしれませんが、吃っているままの自分でOKだという地点に立つことはできるだけ早い方がいいと考えます。子どもがそう思えるためには、まず一番身近な親が心底そう思ってほしい、そんな願いをもって、日本吃音臨床研究会と共催で「どもる子どもの親の相談会」を行いました。
 5月22日(土)、会場であるアピオ大阪に、ひとりまたひとりと、幼児から高校生までの親の方が集まりました。スタッフを含めて約20名。こじんまりとした集まりは、ひとりひとりの思いを受け止め、お互いに返していける温かい雰囲気に包まれていました。

 ・吃音を気にせず前向きに生きていってほしいと願っているが、親としてどう関わり、励ましていったらいいだろうか。
 ・「なぜ私のしゃべり方はこんなの?」と聞かれたとき「くせやから気にしなくていいやん」と答えているが、それでいいのだろうか。
 ・伝えたいことの半分しか話せていないのではないか。全部話させてやりたいと思う。見ていて辛い。
 ・ことばはすらすら出て、ぽんぽんとやりとりできる方が気持ちいい。かわいそうだ。

 この相談会に参加した動機などを織り交ぜながら、自己紹介をしていただきました。
 親として、吃る子どもを見たとき、かわいそう、辛いと思うのは、自然な思いなのかも知れません。しかし、その《かわいそう》が吃る人をどれだけしんどい思いにさせているか、後の人生にどれだけ大きな影響を与えているか。親がかわいそうと思っていると、子どもも自分のことをそう思ってしまいます。そして、どもりにとらわれ、治さなければ人生はないと思いつめ、今の自分を認めることができなくなります。これは、私たちの多くの人が体験してきたことと重なります。
 親として、何ができるだろうかと言うと、何もできないのが基本です。何かしてやりたいと思って参加された方は、もしかしたら肩すかしなのかもしれませんが、実際には、現実の生活の中で子どもたちは生きていかなくてはなりません。そんな中で、自分らしく生きていけるよう、子どもに生きるエネルギーや活力を育てることが大切です。生き生きと生きていってくれたらそれにこしたことはないけれど、そうでなくても、それなりに子どもはやっていくだろうと信じることでしょう。
 ◎吃っていたって悪くない。
 ◎これが私のしゃべり方だと受け止めることができたらいい。
 ◎かわいそうだと嘆かないで、その子なりの人生を歩んでいくだろうと信頼してほしい。
 ◎学童期は、吃っているままの自分でOKと思えることが一番大切で、それがないと、一歩進めない。
 自分たちの経験から、このようなことを伝えました。
 時間がもっとあったらいいのに、参加者もスタッフもまだまだ話したいことがたくさんある、そんな相談会でした。
 


・どもる子どもの親の相談会

〔日 時〕:5月22日()午後1時〜午後4時
〔場 所〕:アピオ大阪
〔講 師〕:伊藤伸二(大阪教育大学非常勤講師・言語障害児教育)
      松本進(豊中市立克明小学校ことばの教室)ほか
〔参加費〕:1,500円(資料代として)
〔主 催〕:日本吃音臨床研究会・大阪スタタリングプロジェクト

 ★ 1999年に開かれた時の報告