趣 旨
ことばの教室に通級する子どもたちは、小学校を卒業すると否応なくことばの教室を終了し、中学校にあがります。吃る人たちの多くが、学童期はいい友だちやいい先生に出会い、またことばの教室があったので、吃音に余り悩むことがなかったが、中学校からが苦しかったといいます
波乱の思春期をどのように送るかが、その後の人生に大きな影響を与えます。ことばの教室で、あるいは学童期の子どもの臨床で何を大切にするか。ことばの教室では、吃音の症状の改善・消失が教師としての役割だと考える人も少なくありません。しかし、子どもが吃音と向き合い、吃る自分をどう認識するか、自己概念教育がより重要なことだと私たちは考えています。
ことばの教室を終了するまでに、ことばの教室として何をしておくかが。どのようなことができるか。吃る子どもの人生を見通しての指導を考えていきたいと考えています。
長年、子どもの自己概念、自己意識について先進的な研究と実践を続けてこられた、ノートルダム女子大学・梶田叡一学長に問題提起をしていただき、吃音に関わる私たちが吃音児の指導にとっての自己概念教育について一緒に学び合いたいと、今回の講習会を企画しました。
ことばの教室を初めて担当する人や、日の浅い人にとっての吃音の基礎講座や長年の実践の交流など、いろんな角度から吃音の臨床について考える講習会にしたいと考えています。
ことばの教室などの教育や病院などの医療、療育、福祉などで吃音児の指導にかかわる臨床家、吃音児の保護者など、吃音に関心のある方々の幅広い参加をお待ちしています。
基本方針
アメリカの吃音研究の権威で自らも吃音者であったチャールズ・ヴァンライパーは、晩年自分の臨床研究の生涯を振り返って、数千人という臨床にあたりながら、自分自身の吃音を含めて、治すことはできなかったと述べています。実際に吃音の治療は難しく、ことばの教室の担当者の中には、担当した吃音児の指導に頭を抱えるケースも少なくないと思われます。吃音の症状の軽減や消失を究極の指導目標とした、従来の吃音観を持ち続ける限り、吃音指導にかかわる臨床家の悩み、何より吃音児の悩みは解消されないのではないでしょうか。私たちは今、この古い吃音観から転換し、新しい視点に立った子どもへの支援のあり方を探る必要性を実感し講習会を開くことにしました。
特別講師 梶田叡一(かじた えいいち)・ノートルダム女子大学学長 文学博士
1941年島根県松江市に生まれる。鳥取県米子市で小・中・高校を卒え、京都大学文学部哲学科(心理学専攻)卒業。国立教育研究所主任研究官、大阪大学人間科学部教授、京都大学教授・高等教育教授システム開発センター長等を経て現職。
主要著書 『子どもの自己概念と教育』『自己意識の心理学(第2版)』(東京大学出版会)、『生き方の心理学』(有斐閣)、『内面性の心理学』(大日本図書)、『生き方の人間教育を』『<自己>を育てる』『<生きる力>の人間教育を』(金子書房)など多数
常任講師 水町俊郎・愛媛大学教授 教育学博士
廣嶋忍・岐阜大学助教授
伊藤伸二・日本吃音臨床研究会会長
主催 島根スタタリングフォーラム実行委員会・日本吃音臨床研究会・
岐阜吃音臨床研究会・岡山吃音臨床研究会・大阪吃音臨床研究会
後援 島根県聴覚言語障害教育研究会
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